ラトビア歌と踊りの祭典記~其の2~

※この記事は2023年7月1日~11日のラトビア旅行中にFacebookに投稿したものを編集したものです。

其の1はこちら

Day4
大コンサート(Lielkoncert)のリハ開始

2023年7月4日

1万6千人が集まる大きなコンサート(Noslēguma koncerts)は通常は最終日に一度だけなのですが、歌の祭典150周年の今回はそれとは別に“大コンサート"(Lielkoncerts)という同規模のものがもうひとつ行われます。“Tīrums dziesmas ceļš“(清らかな歌の道)というタイトルの通り、ラトビアの愛唱歌・民謡を多く取り入れてこれまでの歴史を振り返るようなプログラム。

この日はそのコンサートのリハーサルが開始しました。
一曲ごとに指揮者が変わり、それぞれの持ち時間の中で曲を仕上げていきます。指揮者はVirsdirigents(首席指揮者)と呼ばれ、ラトビアの合唱指揮者としてこの役目を戴くことは大変な名誉であり、合唱団も国民も彼らのことを深く尊敬しています。中には国民的スターのような指揮者もいて、合唱指揮者という職業がなかば公職となっているようにも感じます。

今回初めて首席指揮者を務めるデビュー指揮者も多く、リハで苦戦している人もいました。一方ベテランの指揮者、例えば日本にもよく来るSigvards Kļavaさんなどは非常に巧みで、大合唱団を飽きさせずリラックスさせながらも、テンポ良く音楽を深めていきます。(歌い手側の敬意や集中度の差もある(笑))。

この日の最大の難関は天気!
とにかく不安定でゲリラ豪雨のような大雨が何度も。みんなずぶ濡れで楽譜もびしゃびしゃ、カッパを被りながらブルブル震えて歌いました。僕も軽い低体温症になり一瞬意識が遠のきました。

その後の無料ランチはさらに大変で、運営側のオペレーション不備で信じられない大行列(数千人の参加者に対して給仕のボランティアがたったの15人!)。我々は2時間も待たされて貴重な休憩がオジャンでした。

こういう時、日本だったら怒号とかヤジとかが飛びそうですが、ラトビアではだれも怒らないんですね。再びのゲリラ豪雨で身動き取れなくなった時も、ラトビア人はあちらこちらで歌を歌いだして、そのイヤな状況を楽しいものに変換してしまうのです。本当に原初的な、ピュアな「民謡」の在り方を見ているようでした。


Day5
ゲネプロという名の本番

2023年7月5日

リハが始まって2日目ですが、この日の夜にはもうゲネプロがあります。ゲネプロと言っていますがもはや通し練習などではなく、全員衣装を着て本番通りの演出と進行で、観客も入れてしまうという、れっきとした「本番コンサート」なのです。

今回は大コンサートとクロージングコンサートという二つの大きなコンサートがあり、それぞれにゲネプロがあるので、実質4時間の本番を“4回”やることになるのです。ひえ〜。
午前中に4時間のリハを行い、細かな修正や入場の練習(これが一番複雑)を行い、19時に再集合して20時開演。午後は一旦中心街に戻り買い物や着替えをしてきました。

ところでラトビアでの交通手段というとバスやトラムがメインかと思っていたのですが、今はBoltをはじめUberのようなタクシーサービスが普及しています(電動キックボードも街中に溢れてます)。この日はコンサート会場の森林公園から中心街までの往復をBoltで移動したのですが、大変快適、楽チンでした!

ゲネプロによって、はじめてこの大コンサートの全貌が明らかになります。ラトビア色の楽譜カバーが配布され指定された通りに掲げる演出があったのですが、客席から見るとラトビア国旗になるという趣向。また、ウクライナへの連帯を示すためにウクライナ国歌も歌われました(祭典で他国の国歌を歌うことについては賛否もあったようです)。

並びが割と適当なので(笑)毎回周りにいる人が違うんですが、今回は隣に背の大きな若者たちが。まだ大学生くらいかと思いますが、全身全霊で歌っていて、多くの曲は暗譜していました。
近くで歌っていた老齢のラトビア人に「エクセレント!よくこんなにちゃんとラトビアの曲を歌ってくれた」と褒められたの、地味に嬉しかったです。

終演すると時間は23:45。人混みをかき分けてなんとかバスにたどり着き、ホテルに着いたのがもう深夜1時くらい。演奏上の注意点をまとめてガイスマ団員にLINEでお知らせして、風呂にも入らずバタンキューでした。


Day6
大コンサート(Lielkoncerts)本番!

2023年7月6日

昨夜遅くまでのゲネプロを経て、この日は夜の集合まではリハなし。

合唱団ガイスマはこの午後に駐ラトビア日本大使館にお招きいただきレセプションパーティーに出席しました。歌の祭典首席指揮者の1人で、長年ガイスマと親交を結んでくださっている指揮者のアイラ・ビルズィニャ Aira Birziņaさんもお越しくださいました。
高瀬寧大使、大使館職員の皆様、誠にありがとうございました!

夜はいよいよ大コンサート本番。入場の列に並んでいる時に、5年前に隣で歌った指揮者のアンドリスくん Andris Rasmanisが僕を見つけてくれて「隣で一緒に歌おう」と言ってくれました!嬉しかったー!
(ちなみに彼は10年前の祭典では山脇卓也さん(合唱団お江戸コラリアーず指揮者)の隣で歌ったのだそう(笑))

全体の流れはゲネプロと同じなのですが、やはり本番となるとテンションが上がります。周囲の歌い手の声もよく乗っているし、昨日までうまく行ってなかった曲も、一気に形がクリアになっています。特に男声合唱と女声合唱クオリティはお見事でした。
いくつも熱くなる曲がありました。
・クリャヴァ Kļavaが指揮したMartinš Braunsの”Daugava”
・カスパルス・アーダムソンスKaspars Àdamsonsが指揮した”Sidraba birzs”
・マーリス・シルマイスMāris Sirmaisが指揮した”Gaisnas pils”
が特に格別でした。

カスパルス・アーダムソンスは若手のホープだそうですが、本当にセンスのある素晴らしい指揮者だと感じました!
終演は23:50!これでもアンコールとかなかったので短い方!

4時間弱にわたるこのコンサートは国営TVで生中継されていました。アーカイブを以下のリンクで見ることができます。(視聴期限不明)

https://replay.lsm.lv/lv/ieraksts/ltv/299178/koru-lielkoncerts-tirums-dziesmas-cels

其の3へ続く

合唱

Posted by Taku Sato