京の都で民謡合唱団「篝」と出会う
11月17日、ロームシアター京都サウスホールにて行われた民謡合唱団「篝」さんの第17回演奏会に、常民一座ビッキンダーズがゲストとして招かれました。
民謡合唱団「篝」さんは1970年創立で、京都府下を回って生き残った民謡の採集をし、それを合唱化して歌い継いでいるという、全国でも類例を見ない取り組みをしている合唱団です。
日本の民謡、特に仕事唄の多くは、文明化に従ってその仕事自体がなくなってしまったことで、唄自体が消滅しました。1970~80年代は明治・大正生まれでそれらの歌をぎりぎり知っている世代が存命だった、民謡採集においてはラストリミットの時期だったわけです。
民謡合唱団「篝」さんとのご縁は5年ほど前に遡ります。
2019年ごろ、ヤフオクで篝さんの私家版CDを発見し落札したのがその始まり。いわゆる普通の合唱団とは一線を画した、実に”民謡らしい”歌い方に一挙に虜になりました。
2021年の春に、コーラスカンパニーのオンラインセミナーで民謡と合唱について講義することになった際、ぜひ篝の取り組みと演奏をご紹介したいと思って、音源使用の許諾のために連絡したのが最初のコンタクトでした。
お返事くださった代表の桐畑さんは、私や常民一座ビッキンダーズにとても興味を持ってくださって、いつかお会いしたいですねと約束を交わしました。
その約束が単なる社交辞令でないことを示すように、その年の年末に関西に行く用事があったのを幸いに篝さんの練習見学を申し込み。わざわざ練習日をずらしてくださり、いつもの練習風景をお見せくださいました。この時聞いたみなさんの生の歌声の”常民み”にまたしても感激。
コロナ禍にあっても団を続けながら京都の民謡への愛慕を失わなずにイキイキと歌われる姿が印象的でした。
それから2年ちょっと経った頃か、篝さんが久しぶりの演奏会を開催するにあたり、ビッキンダーズをゲストとしてお呼びしたいとの嬉しいお誘いが!
人生、そして音楽の尊敬すべき先達からのお声がけに二つ返事で快諾いたしました。
いやあ、熱烈ファン(ストーカー)しているといいこともあるもんですね!
ビッキンダーズは田村座員が臨月のため京都行きが難しく、今回初めて囃し方として石森裕也さんをお迎えしました。
神楽囃子を中心として、土着芸能や民謡にも通じる石森さんの笛と太鼓は、常民の芸能の原初の発想に導いてくれる素晴らしい響きと律動で、合わせがほんとうに楽しくてたまらない!
ことに歌の調子とまったく異なる調子で吹かれる笛などはいかにも田舎風で、明らかにズレているのに歌っているうちにそれ自体が調和に感じられる経験。
今後も是非一緒にやりましょうと約束いたしました!
当日の客席はほぼ満席!
篝の皆さんの演奏は、僕には憧れが止まらない「等身大の人間」の歌声の集まりで、民謡を合唱として歌ううえで欠かすことにできない「常民の声」と「律動」があふれていました。
こういう風に民謡を歌える合唱団、本当に美しい。
ズレていてもいい、ピッチが揃っていなくてもむしろそれがいい。一人一人の歌が発露し続けていること、これが常民の合唱の根本なんじゃないか。
この味、佇まい、声の魅力は、長く民謡を歌い続けてきたからこその宝物。
ビッキンダーズもいつかこういうおじいおばあになりたい!
最後にビッキンダーズの演目をば。今回は「にっぽん祝い唄づくし」と題して、日本全国のお祝いの民謡を集めました。
ちなみに今年は田村座員と日下座員が結婚、石森さんは9月にお子さん誕生、田村座員はこのコンサートの3日後に出産と、おめでた続きの一座でした!(僕はなんかあったけな?)
- 田植え唄 (群馬県)
- 新庄の囃子田 (広島県)
- 田峯の念仏踊り (愛知県)
- 仙北長持唄 (宮城県)
- おぼこ祝い唄 (青森県)
- 塩原の大山供養田植 (広島県)
- 鯨唄(祝い目出度) (長崎県)
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