四年ぶりの再会 ~ジュリアン・グレゴリーWS~
ここ最近二つのワークショップに主催側として関わりました。
一つはThe King’s Singers(キングズ・シンガーズ)の現役メンバーであるJulian Gregory(ジュリアン・グレゴリー)氏によるアンサンブル・マスタークラスと発声ワークショップ。
ジュリアンが日本でワークショップを行うのは3回目。
2017年の初回は半クローズドで、僕はVocal ensemble歌譜喜として受講しました。第2回は2019年で、今度は歌譜喜が主催になりオープンな形で開催。この時には通訳として携わりました。
今回は富本泰成君のAcappelLaboの主催で、またしても通訳として関わることになりました。ジュリアンのすぐ近くで彼の言葉、歌、しぐさを感じることができるというのは大変役得ですが、とてもエネルギーのいる仕事でもありました。
4年ぶりに合うジュリアンはやっぱり気さくで優しく、日本語のスキルは大幅上達!講習外の時間はできるだけ日本語でコミュニケーションをとっていました。なんでも週に一回2時間の日本語レッスンを欠かさず継続しているそう。
ジュリアン自身はお母様が日本人で、自身のルーツとしての日本をとても大切に思っているようです。日本でアンサンブルに関する教育を広げていくことが夢の一つだと語っていて、これらのマスタークラスは彼にとっても喜びの一つであると明言していました。
午後のマスタークラスでは4つのアンサンブルの指導を、夜の部では90人の参加者とキングズのレパートリーを歌うワークショップ、いずれも濃厚で密度の高い講習で、通訳しながら脳が情報マックスで溶けそうでした。(夜の部では僕よりずっと英語が堪能な妻にも助けてもらいました。)
いくつもの金言、心にしみる指導があったのですが、通訳しながらだと記憶に書き込まれにくいんですね(笑)。たぶん僕より参加者の皆さんの方が色々覚えていそう。
それでも強く印象に残った言葉が3つ。
Performing out
通訳していて、日本語にできなかった言葉。何度もこの言葉を口にしていました。外に向かってパフォーマンスする、とでもいうべきか。ジュリアンの指導は常にお客さんに向いていて、演奏者の見た目、心の状態、視線などがすべて聴衆に影響を及ぼすと考えているよう。自身のうちに音楽があっても、それが放出され聞き手に届くのには必要なファクターがたくさんある。
Golden silence
演奏が始まる前、音取りをしてから歌いだすまでの数秒間にだけ存在する静寂。その静寂の中にこれから歌われる音楽の感情、流れ、ニュアンスがすべて含まれているとでもいうか。キングズの演奏でも毎回感じる美しい時間は、静寂を愛し味わうところに秘密があったのだと。
Communicate with audience
聴衆とコミュニケ―ションすること、といえば当たり前のような、使い古された表現のようだけれども、そのコミュニケーションが成立するためには演奏者も聴取もリラックスして心地よい状態になっていないといけない。"Comfort"という言葉もたびたび口にしていました。演奏者の緊張や散漫な気はそのまま聴衆の心理状態に映し出されてしまう。ミラーリング、あるいは客体の影響ともいえるでしょうか。
講習外の時間にも休憩で純喫茶に行ったり、打ち上げで串焼き屋に行ったり。どの瞬間でジュリアンはポジティブで柔らかく、時に子供のような無邪気さを見せるのでした。こんなん、いっそう推しになっちゃういよね。
また近いうちの再会と、次のワークショップ開催を約束して。
Thank you so much, Julian!
長くなっちゃったので、もう一つのワークショップ、ビッキンダーズのものは別記事で!
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