仕事唄に魅せられて ~ビッキンダーズの霜月~

11月はビッキンダーズ一色のひと月でした!

まずは11月3日には4回目となるワークショップ『ビッキンダーズと古民家で歌おう

4月の畑でのWSでお世話になった身体教育研究所鎌倉稽古場の全面的ご協力をいただき、同稽古場の大松美紀子先生を講師に迎えて屋内での講義となりました。

野口整体をルーツとする大松先生の身体動法は古来の日本人の身体を取り戻し、日常の些細な動きに驚くべき変化を感じさせるアハ体験の連続!

「ただ座る」「ただ歩く」ことの変化に加えて、自分の身体の変化によって他者の動きをも変えてしまうという、文字で書いただけでは何のことだかわからないような稽古も。お菓子のリッツを使った稽古はもうほんと意味が分からない(笑)。

相手を動かすのではなく、相手が自ら動きたくなるような身体。これは仕事にも、アンサンブルにも通ずる奥義のような教え。

さわりだけでまだまだその芯には全く達していません。これはまだまだ学ぶべきことがある・・・

この日の目玉は本物の石臼を使った粉挽き作業をしながらの仕事唄。広島の臼挽唄と群馬の管巻唄(養蚕で糸を繰るときの歌)を題材に、労働と歌が相互に作用しながら声も動きも変えてしまう様を楽しみました。

鎌倉稽古場とは今後も様々なイベントを共同開催していく予定です。どうぞお楽しみに!


11月19日には墨田区にあるキラキラ橘商店街のお祭り「あそぼう祭」にて、30分の屋外ステージ。

同商店街を拠点とする劇団シアターキューブリックからのお誘いで、一座としては初めて商店街イベントに参加しました。

仕事唄ばかりのニッチなプログラムでお客さんが集まるか心配だったのですが、最初に飴売り唄をやって子供たちの気を大いに引いたのが功を奏したか(笑)、想像以上の大盛況でした!

この日の演目は以下の通り。

  • 飴売り唄
  • 岩海苔採唄(静岡)
  • 神輿音頭木遣(三宅島)
  • 土羽打ち唄(群馬)
  • 田峯の念仏踊り(愛知)
  • 塩原の大山供養田植(広島)

最後の供養田植では楽しそうにリズムのってくれるお客さんもおり、仕事唄がもつ律動、グルーヴが自然と人の身体を動かしてしまう力があるのを感じました。

そう、仕事唄には律動が内在している。かつてはあらゆる仕事に歌があり、その仕事の動きが歌の律動を生み出していた。仕事を効率化するため、仕事の苦労を忘れるため、人々の団結をより固いものにするためなど、歌はあくまで機能を負った道具であった。

しかし機能に徹した仕事唄の律動は、情緒や理性を超えてダイレクトに人間の身体を揺り動かすエネルギーを持っている。その純粋で単純な美しさを昔の人々はよく知っていたんだろうと思います。

ビッキンダーズの歌がひとをノセることができる、ということがはっきりとわかった大収穫のライブでした。


最後は今年最大の肝いりイベント『民謡キングギドラ』!

日本の民謡をレパートリーとする菜の花楽団さんとすずめのティアーズさんにお声がけし、初めての3マンライブを企画しました。いずれも僕が尊敬してやまないスーパーグループ!三つ首の大怪獣キングギドラの名に恥じない、超強力な面々となりました。

菜の花楽団はさとうじゅんこ(Vo)、チャーリー高橋(Gt)、岡野勇仁(鍵盤)による、ボサノバなどのブラジル音楽と日本の民謡、新民謡を巧みにクロスオーヴァーさせるトリオ。

すずめのティアーズは佐藤みゆきとあがさによるデュオで、ブルガリアンボイスの緊密なハーモニーをベースに日本民謡や江州音頭、奄美民謡、バルカン半島の民謡などを自由自在に組み合わせる気鋭のグループ。

一方われわれビッキンダーズは、仕事唄(労作民謡)や伝統芸能をほぼそのまま、生に近い形で再現を試みる無骨なものたち。(今回は打楽器奏者にピアニストの薄木葵さんを迎えました)

三者三様の、どれもほかではやっていないアプローチ。

ビッキンダーズの演目はこの通り。

このうち4曲はこのライブのための新曲!特に「鯨唄」はかなりの難曲で稽古も相当大変でしたが、お客さんからとても熱狂的な評価をいただき、共演したチャーリーさんにも褒めていただきました。

「仕事唄そのもの」が、何も加えなくともそれ自体として「かっこいい」と思えてもらえる、というのは本当に尊い。そりゃあ僕ら自身はカッコいいと思ってやってるんですが、これが見る人にとってもカッコイイのかどうかは、ライブ経験の少ない我々にとってはいつも不安だったのです。

一座の行く先を祝福してもらえるような、本当に激アツな最高の一夜でした。


余談ですが、民謡キングギドラの会場となった吉祥寺MANDA-LA2というライブハウスは、実はビッキンダーズ結成の地でもあるのです。

2016年の11月、「チャーリー高橋まつり」というイベントに日下麻彩が出演し、観客として僕と田村幸代が訪問。そこで見た数々のパフォーマンス、特に菜の花楽団の演奏に刺激され、前々から考えていた「日本民謡を探求するグループを作りたい」という思いが沸騰。

ライブの帰り道、日下と田村の二人に「3人でなにかやらないか」ともちかけ、二人が即座に快諾してくれたのでした。

だから今回のライブは我々にとっては里帰りであり、原点回帰そのものなのでした。

これからもビッキンダーズは、飽きもせず仕事唄を愛し、掘り起こし、歌い遊んでいきます。

来年は東京を飛び出しての公演もあるかも?!

その他

Posted by Taku Sato