【最終集計】シニア合唱団員ネット環境アンケート結果(その3)

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コロナによる合唱活動の制限について、またはオンラインでの合唱練習についてのご意見

これはアンケートの末尾に自由回答欄として設けたものです。

記述式だったのですが、なんと506の方がこの欄に記入くださいました。回答者全体の実に61%にも上ります。

現在の合唱の状況について、オンラインでの動きについて、多くの方が実に多様な意見をお持ちであることが、この記述で分かりました。回答いただいたすべての内容に目を通していますが、ここの記述に一番重要な情報が含まれているような気がいたします。


大まかではありますが、ご意見をいくつかのグループに分けて集計を取ってみました。

「練習中止はやむをえない」「リアルでの練習が可能な日を待つ」の多さが目立ちます。今は合唱ができなくとも、伏して待つ、という姿勢の方はかなり多いようでした。

リアルでの練習が始まったとしても、高齢や既往症を持つ団員にとっては練習に行くにもリスクがあり、そこで団員のばらつきが出ることを恐れる意見も多くありました。

ガイドラインの発表を待つ声も多かったのですが、このアンケート終了後、東京都合唱連盟、および全日本合唱連盟から合唱練習に関するガイドラインが公表されました。

新型コロナウイルス感染症影響下での合唱練習再開ガイドライン(東京都合唱連盟)

合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン 第1版(全日本合唱連盟)

上記の汎用版


オンラインでの合唱活動に関しての意見は最も多かったです。

オンラインに対して消極的、否定的な意見が多いのですが、回答を拝見すると「(オンラインは経験していないが)抵抗がある」という方がかなり多い印象を受けました。

実際にオンラインに取り組んでみて肯定的な意見を持った方と、消極的な意見を持った方の比率はほぼ同率のようです。

オンライン合唱練習はまだまだ改善の余地のある、新しい形式の練習方法ですから、これからブラッシュアップされていくにつれて、この印象は変わっていくかもしれません。そのためには指導者が、これまでにない経験と知識領域を必死に開拓しなければいけません。


また、アンケート本編に組み込むべきだったとあとから気付いた項目があります。

「家で声出しできる環境にありますか?」

オンラインで練習や演奏をするうえで、前提条件ともなることですが、自由回答ではやはり「家では歌うことが難しい」というご意見が多く寄せられました。

インターネットやデバイス環境以上に、住居環境がもっとも大きなハードルとなるかもしれません。これについてはもしさらに調査をすることがあれば、是非設問に加えたいと思います。

(そしてこれはやはり、若い世代で一人暮らしの合唱団員にとってのほうがより深刻な問題となるかもしれません。どなたか大学生~20代くらいの合唱人の状況調査をしてくれないかなぁ~)


いただいたご意見の中から、いくつかを紹介したいと思います。この世代の声を代表するもの、とは言えないと思いますが、生の意見として貴重と思い、公開させていただきます。

・出来る人は少ないと思います。また、隣の声が聞こえてようやく歌っているような方は自分一人では声を出せません。家族がいる環境で同時に練習は無理です。

・合唱活動の制限は概ね妥当と受け止めていますが、公演時の客席の間引きは厳しすぎます。一律入場者数の50%だけで良いかと考えます。
オンラインの合唱練習は、合唱練習の代替にはなり得ませんが、別の楽しみとして考えて楽しむ分には、面白いと思いました。ただ、オンライン合唱は、かなりの技量が要りますね。

・オンラインでの練習となるとヴォイトレくらいが限度かと思います。合唱練習では自宅で大声出せる環境にないとか、自分の声は生、他の人はPCからということになり、違和感を覚えると思います。

・オンラインによる練習は合唱ではない。単なる音楽授業もしくは会議に陥る。

・合唱(歌うこと)が本当にダメなのか検証してはどうでしょうか?何メートル間隔を取ればとか…

・オンラインで音声データを集めただけのものは合唱ではないと考えています。

・活動の制限は致し方ありませんが、指導者がAIに関心ないとオンラインできないので残念

・オンラインでは難しいと思うので他の趣味を探しています。

・歌わないことが自分の日常になってゆくことの淋しさ

・わざわざお出かけの支度して、公共交通機関使って往復2時間かけて行く通常練習よりも、オンラインの練習がより好きかもです!…くらい、楽しいですね、オンライン練習も。

・通常練習とは、全く異なる楽しさですが、楽しみの大きさは変わりません!

・どういう形であっても合唱団の存続を願っています。

・合唱が人間形成にとって極めて重要な役割を負っていることは言うまでもなく、
人生を通じて親しむことは人間の営みにとって不可欠と言ってもよい。
今回不幸にも感染症の流行によってその活動が制限されることは、形成過程の人間に
とっては人間として十分成長できないことであり、老いてもそれを楽しむ多くの人々の
生きがいを奪う大変な出来事であり、何としても解決をしたいことである。そのために
発展中のディジタル技術が利用できるのであればその普及活動に参加したいものである。

・tuttiハモラスを見ました。参加するにはどうすればいいか、よくわかりません。でもやってみたいです。合唱団でクラスターが出たし、コロナには罹りたくないので、練習が再開されても参加したくないです。

・クラスター発生は事実として認めねばならないが、本当に合唱活動で感染拡大するのか?はっきりさせて欲しいと思う。

・家庭内では家族の事情もあり練習はできない場合もあります。私の場合は家庭を離れて歌う事がリフレッシュです。

・歌えること、生きていること、大変な今、合唱を再開できる日が多分誰もが幸せを感じ日になると信じています。心の中に歌。唇に歌はもう少し我慢して。

・団員の8割が60歳以上なので命の危険を考えるとやはりやむを得ないと思う
個々でのオンライン利用には差が出てしまうので、公共施設にその環境を整えてもらえたら、団員全員と指導者がつながり遠隔での指導も受けられると思う

まとめ

予想以上に多くの方から回答いただくことができ、非常に多くの気づきと示唆を与えていただきました。

当初はオンライン練習にはハード面でのハードルがあるのではないか、と予想して調査を開始しましたが、実際はハードはかなり普及しており、むしろ「オンライン」そのものへの精神的な壁が大きくある、ということが浮き彫りになりました。

合唱は早く再開したい、でもオンラインでは合唱にならないのでやらない、という意見の数が強く印象付けられます。

多くのアマチュア合唱団は、練習をすることで初めて「合唱団」という実態を手に入れることができるのでしょう。その練習というのは、音楽を磨き上げることでもあるし、仲間と顔を合わせて同じ時間と空間を共有すること、でもあります。

オンラインがそのどちらか一方にでも寄与することができれば、「合唱団」というコミュニティを維持することができるかもしれない。
リアルでの対面練習にはまだまだかないっこない状況ですが、指導者としてオンラインでのコミュニティ維持の選択肢を常に持つことは重要であると考えます。

この調査結果が、合唱指導者、合唱団運営にかかわる方、そして多くの合唱団員の皆さんに何らかのヒントを与えてくれるものになれば幸いです。

あらためまして、調査にご協力くださった皆様に感謝申し上げます。

合唱

Posted by Taku Sato