リモート合唱・音さまざま
昨日(7月9日)夜、Ensemble SalicusのYouTube配信によるリモートライブが終了いたしました。
400名を超える方々にご視聴いただき、チャットも大いに盛り上がっておりました。皆様誠にありがとうございます。
白眉はなんといってもタリスの40声ですね。サリクスメンバー4人が10声ずつ計40トラックに、一般参加者63名の録音を合わせた、総計103トラックのリモート合唱は他ではなかなか聞けないものでしょう。僕はこれには参加していなかったのですが、聞いていてすっかり引き込まれました。
ライブは7月16日までアーカイブを視聴できますので、見逃した方はぜひともご覧ください。
※アーカイブ動画の公開は終了いたしました。
この中で今回リモート合唱に取り組んだのが以下の3作品です。
・Gregorian chant Proprium in ascensione Domini Offertorium “Viri Galilaei"
グレゴリオ聖歌「主の昇天の祝日のミサ固有唱」より奉納唱「ガリラヤの人々よ」
・Giovanni Pierluigi da Palestrina Missa Papae Marcelli “Sanctus”
ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ「教皇マルチェルスのミサ」より「サンクトゥス」
・Giovanni Gabrieli “Cantate Domino canticum novum”
ジョヴァンニ・ガブリエリ「主に向かいて新しき歌を歌え」
パレストリーナとガブリエリは6声のポリフォニーで1人1声、録音方法は、先に主宰の櫻井元希くんによって多重録音された仮歌(かりうた)が配布され、各メンバーがそれを聴きながら自分のパートを歌う、というもの。個別に録音するリモート合唱とはいえかなりアンサンブル力を必要としました。
グレゴリオ聖歌は渡辺研一郎君の録音を聴きながら歌う、同じく「仮歌方式」でしたが、これは本当に大変でした。ライブの中でも言いましたが、細かい録り直しとデータ破損によるやり直しを合わせて、350テイクも録音していました。
そもそも聖歌自体が難しいということもあるんですが、「ユニゾンで合わせる」ということが多声部の合唱以上に難しいことを思い知る経験となりました。これ、もしかするとリモート合唱で一番難しい部類の音楽かもしれない。
Ensemble Salicusは今後も定期的にリモートライブを行う計画です。どうぞ今後もご注目ください!
さて、先週のことになりますが、7月3日にvocalconsort initiumが展開する新しい形のオンラインコンサートのプラットフォーム、「initium; auditorium」(イニッツィウム・オーディトリウム)がオープンしました。
オープニングに際し、vocalconsort initiumとして、ここで3つの作品のリモート合唱に参加しています。チケットを購入いただくと、いつでも、いつまでも演奏を楽しむことができます。
【vocalconsort initium ; online concert 遷 [sen] | transition】
・Hugo Distler: Ehre sei dir, Christe (from “Das ist je gewisslich wahr”)
フーゴ・ディストラー: キリストに栄光あれ(“それは確かなる真実”より)
・Burkhard Kinzler: Übermalung nach Thomas Tallis
ブルクハルト・キンツラー: トマス・タリスへの“上塗り”
これら3作品はすべて録音方法が異なりました。
ディストラーはオーソドックスな4声体のコラールで、指揮者の谷・柳嶋両氏による多重録音に合わせる「仮歌方式」。
キンツラーは即興的な要素が強く、ソリスト群と合唱群が偶発的に絡むシアターピース風の音響で、指揮者による子細な録音指示書が配られました。(例:〇ページから〇ページまで示された短いフレーズを自由に繰り返す、など)。細切れの様々なセクションを1人2テイクずつ提出するというもの。「音素材方式」と僕は呼んでいます。
第2楽章では、元歌であるタリスの「エレミアの哀歌」をスタッカートで点描のように歌うソロも担当しました。
成清さんの作品は以前教会で実演している24人24声のための新作ですが、今回は12名の歌手が2パートずつ歌いました。これはテンポが固定だったので、クリック音とMIDIトラックを聴きながらの録音。「クリック方式」と勝手に呼んでいます。
録音の方法も、音楽のスタイルも全く異なる3作品。出来上がった音響も全く違うものになりました。その違いはぜひ実際にお聞きになって確かめてみて下さい。
短期間でグレゴリオ聖歌からポリフォニー、コラール、現代音楽まで幅広いスタイルのリモート合唱に参加することになりました。
仮歌方式、音素材方式、クリック方式のいずれも、指揮者が録音前にしなければいけない準備量の多さが半端ありません。録音に参加する歌手が戸惑わない、つまづかないための下準備が必要、という点では、リアルのリハーサルと変わらないのかもしれません。
僕自身は完全に歌い手としてだけの参加でしたが、その仕事量・熱量を目の当たりにして、感服しっぱなしでした。
ものすごくクオリティの高いリモート合唱作品が次々現れるようになりましたが、次のフェーズは、どれだけ歌い手個々の「はみ出し方」を許容して、作品の中に美しく反映させられるか、というところなんじゃないかと思います。ひたすらに整ったものは扱いに慣れたらある程度できると思うんですが、ランダムな、あるいは割り切れない数値や現象に魅力を与えることができるか。
ところで6月頭に書いたブログ「リモート合唱(テレコーラス)事始め」は、全日本合唱連盟さんのサイトにリンクを張っていただいたおかげもあって、いまだによく閲覧されている記事となりました。
リモート合唱への取り組み方、方法論などについて、情報を求めている方がかなり多いことを実感させられます。
この1か月半で、私の宅録環境もかなり変わりました。
・PCがWin7 →Win10
・6000円台のUSBコンデンサーマイク →オーディオインターフェース機能付きのレコーダー(TASCAM DR-40X)+友人にもらったいいマイク(Yoga FX-510)
・DAWソフトがGarageBand →Studio One Prime(無料版) →Professional検討中・・・
・モニターヘッドフォン SONY MDR-CD900ST
収入は減っているのに設備投資にはお金がどんどん羽ばたいていってしまいます(泣)。ただ、この投資が現在確実にいろいろな仕事につながっているので、どうにか諸々の補助金の助成対象にしていただきたい・・・という期待感。
最後に、最近見て一番感動した、というか「何回も観た」リモート合唱の動画をお見せします。
もうずっと倍音と差音が轟きわたってます。108人って人数もイカしてる(笑)
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