「日本民謡と合唱」オンラインセミナー終了

㈱コーラス・カンパニー社とinitium ; auditoriumの共同企画で行ったオンラインセミナー「日本民謡と合唱」が無事終了しました。

3回の講座にはそれぞれテーマがありました。

  • 第1回 4月8日(木) 真の民謡とは? ~常民の声を聴く~
  • 第2回 4月15日(木) 民謡の再創造 ~日本民謡の合唱史~
  • 第3回 4月22日(木) 民謡の声と律動 ~民謡を歌ってみる~

第1回では町田佳聲監修のLP-BOX「日本労作民謡集成」から数多くの録音を紹介し、現在聞かれる民謡が本来の民謡とはちょっと違っていること、常民が歌う民謡の「声」そのものの魅力を中心にお伝えしました。これらの貴重な音源は初めて聞かれる方も多かったようで、好意的な反響をたくさんいただきました。常民=“普通の人”の歌声に面白さ、カッコよさ、美しさがあることに気づいていただけたというのは大きな収穫でした。

日本の民謡は、幸い数多くの常民の歌声が録音で残されています。ただ、民謡を題材とした作品を歌う際、原典の常民の歌声を参照するということはあまりされてこなかったのではないか、という気がします。作曲家がこの常民の歌声から発想を得て作曲しているとしたら、演奏家はその転換の過程で生じる化学変化がどういうものだったか、注目すべきと思うのです。

過去のブログで、さまざまな民謡の録音について紹介しています。ぜひこちらも参照してください。


第2回は、日本民謡が合唱作品として創作されてきた歴史を俯瞰する、あまり他では見たことがない「日本民謡合唱史」を構想してみました。

このために、日本人による民謡を題材とした合唱曲のリストを作成し、400作品以上をリストアップしました。年代ごとに作品を見ていくと、それぞれの時代における音楽界の動向や、「民族性」をめぐる議論、合唱界の国際化などの社会的状況の変化によって、作品数や取り上げられる民謡のジャンル、作曲の方法論が変化してくるのが分かりました。

民謡を軸に合唱の歴史を観察する、というのは僕にとっても初めての経験で、しかも情報量もまだまだ足りていません。ぜひ多方面からのご批評とご意見、情報提供を募って、ブラッシュアップしていきたいと思っています。

私がまとめた民謡合唱曲のリストをこちらで公開します。
作品集計方法ですが、これまでに出版された作品はもちろん、未出版のもの、合唱団や作曲家のウェブサイトなどからの情報、音大図書館OPACの検索結果などを集積しています。

民謡の旋律をそのまま編曲した作品だけでなく、民謡からインスピレーションを得た創作楽曲(間宮芳生の『合唱のためのコンポジション』シリーズなど)も含めています。

特に未出版の作品などはまだ情報をすくい上げ切れていないので、皆様からのご指摘、情報をいただきたく思います。リストに誤りがある、こんな曲は知っているか、こんな作曲家がいます、などどんな情報でも結構です!

【日本民謡を代とした合唱作品リスト】
https://docs.google.com/spreadsheets/d/17x_eNST-RGg3zRaeYjX2Syu3bQZa30U6Vjj8OQWXoao/edit?usp=sharing


第3回のテーマは民謡の「声」。現代の私たちが民謡をベースとした合唱曲を歌うときに、どういう発声で歌えばいいか、というのはこれまで多くの試みがなされてきていますが、いまだに決定的な定説は現れていないように思います。

逆説的ですが、そういった定説はこれからも存在しえない、というのがこの回の主張の根幹です。

それでもなお「民謡の声」と呼べるものはあると思っていますし、その声は「日本人の声」であるとともに、私たちが音楽するための最も基本的な声でもあると思います。
この回では、僕が座長を務める常民一座ビッキンダーズの歌手3人が、常民の声をどのように想像して探索しているか、一つの方法を動画でお見せしました。重要なポイントは「身体性と律動」、「民謡が歌われていた環境」、「必然性のある声」、そして「生活感情と精神」です。

この回の最後は、僕が尊敬する先達として、小山清茂、間宮芳生、柴田南雄、そしてわが師・森一夫の金言をご紹介しました。これらの言葉が僕を民謡に惚れこませ、歌うことの原動力となってくれています。


コーラス・カンパニーでのセミナーは終了しましたが、これらの動画は後日再編集され、新たなコンテンツを加えて「完全版」としてinitium ; auditoriumで販売される予定です。

この“新たなコンテンツ”については現在検討中ですが、他では絶対に見ることのできないレア映像などを盛り込みたいと思っています。どうぞ続報をお待ちください!

民謡

Posted by Taku Sato