音楽で結ばれる ~ジュリアン・グレゴリーWSツアー2025~
今年もThe King’s Singers(キングズ・シンガーズ)のメンバーであるJulian Gregory(ジュリアン・グレゴリー)さんのワークショップの通訳としてご指名いただきました!
主催は友人の富本泰成君が運営するAcappelLaboでした。
前回は2023年11月。前回の記録はこちらの記事をどうぞ。
今回はかなり盛りだくさんで、まずは1月に一日だけのマスタークラス&ワークショップ。午後に四つの少人数アンサンブルへの個別指導と、夜には100名以上の参加者とともに指揮なしのアンサンブル。
アンサンブルはハイレベルな4組で、ジュリアンの指導は演者の佇まいからアンサンブルの細かなテクニックに至るまで全般に渡り、持ち時間の中で目に見えて成長していくのが分かりました。
英語の通訳はジュリアンの時しかやらないので今回も耳が鈍りまくり(笑)。今回は仲間の對馬香さんにも通訳の手伝いをしてもらいました。助かった~。
そこからわずか3か月後、4月24~27日には全国4都市を縦断するワークショップツアー!かつてない規模のチャレンジングなイベントとなりました。
4月25日(金)岩手・盛岡
4月26日(土)福岡・博多
4月27日(日)京都
ジュリアンのワークショップを東京以外で開催するのは初めて。全国でどれくらいの方が参加してくれるか、ぎりぎりまでわかりませんでしたが、結果としてのべ500名以上の受講者に恵まれました!
これもひとえに各地でワークショップの準備と集客に尽力してくださった協力者の皆様のおかげで、岩手では及川剛さん、福岡では今釜亮さんの多大なるご尽力を賜りました。改めて深くお礼申し上げます。
過去の経験から、ジュリアンの導きであれば何人であってもアンサンブルが成立することはわかっていました。それでもなお、その場で生きもののように息が重なり、歌声が溶け合っていく様を目の当たりにするのは感動的であり、神秘的でもありました。
その秘訣は呼吸であり、フレーズの姿であり、なによりも音楽のストーリーである。
キングズ・シンガーズが一貫して大切にしていることがそこに凝縮されていました。
4回のワークショップは集まった受講者のサウンドに応じて少しずつ内容が異なり、様々なアプローチでキングズのエッセンスへと導いてくれました。だから毎日毎日新しい発見と気づきが絶えませんでした。
今回もいくつもの金言をいただきました。今覚えているものの中からいくつか、
Audible breath
指揮なしで曲を始める場合に、お互いに聞きあえるように「聞こえる息の音」を発すること。アイコンタクトやボディアクションに頼らなくとも、息だけで音楽を共にすることができる。
ブレスの中には様々情報があり、スピード、ダイナミクス、フィーリング、アンサンブルが吸気の中に込められる。これが極まると、今のキングズのように全く息の音の聞こえない歌い出しも可能なのか!?
Collective
「共有された」とか「共同で生み出された」みたいな意味なんだけど、Make the feelings collectiveみたいに使ってました。その場にいる人々が持っているものを外に出し、それを集めていくようなヴィジョンだと感じます。単に「揃える」という指示は一度も口にせず、歌い手から何かが集まってくるのをじっくり、信頼して待っているジュリアン姿が思い出されます。
関連して「Journey」という言葉もよく使っていました。フレーズを共にするとき、あるフィーリングを共有するとき、Enjoy the journeyみたいな言い回しをよく使っていたのが印象的で、僕は全然日本語に訳しきれませんでした(笑)。単なる旅ではなく、だれかと一緒に歩む道程のような。
Help each other
お互いに助け合う、といえば当たり前のように聞こえますが、ことアンサンブルにおいては何より大事で、しかしめちゃくちゃ難しいことです。利他的であるということはアンサンブル歌手としての素養の一つであると思っているのですが、メンバー全員が利他的であれば互恵的アンサンブルが達成できる。フレーズを一つ歌う中にも開かれた耳とマインドが必須であることを繰り返し教えられます。
Allow people to connect others through music
盛岡でのQ&Aで「ジュリアンさん自身の目標とは何ですか?」という質問に対してのジュリアンの答えの一つです。この言葉が強く印象に残ったのは、僕自身にとってもこれが音楽を続けている大きな動機の一つだったことに気づかされたからでしょう。
音楽を通して人と人を結ぶこと、そして他者と結ばれることが喜びであると人々に伝えていくこと。
ジュリアンのワークショップの根幹ともいえる思想だと思います。一見陳腐に聞こえかねない常套句のような言葉かもしれませんが、彼のワークショップの後ではそれが混じりっ気のない真実であることが伝わるのです。
ジュリアンとの5日間の旅は忙しいながらも終始楽しく朗らかで、この旅を通して通訳パートナーから友人になれたような気がします。何気ない日常の話や将来の話、くだらない話などたくさんの話を日本語で(!)交わしました。ジュリアンの日本語スキルの向上率がすごすぎて震撼。
ジュリアンは今後もワークショップで音楽の喜びを広げていくことを希望しています。しかしながらこのツアーを実現するには財政面でのハードルは決して低くなく、たくさんの方のご参加、ご支援、ご協力が必須です。
そして彼のワークショップは何度も受けることでどんどんその深みが増していきます。通訳で4日間連続で参加していた僕が言うのだから間違いありません!今回参加された方はぜひリピーターとなっていただいて、今回参加されなかった方はぜひ次回はお見逃しなく!
来年以降もこのような機会が続けられるように、僕自身もスキルを磨いておきます。
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