みんな?大好き『杓子売唄』
先日、私が座長を務める常民一座ビッキンダーズのYouTubeアカウントで、私の歌う『杓子売唄(しゃくしうりうた)』(間宮芳生『日本民謡集』より)をアップいたしました。
なにはともあれぜひともお聞きください。
杓子とは、つまり木製のスプーン、あるいはしゃもじのことで、これを売り歩く行商人の売り文句をお座敷唄にした民謡です。
売り文句というと、ガマの油売りとかういろう売りが有名ですね。小気味のいいリズムに乗せて、あるようなないようなことをベラベラとまくし立てると、なんだかその商品がありがたいもののように見えてくるんでしょうね。
杓子売りは、手元にある3本の杓子が、吟味に吟味を重ねて選んだ木材から3年と3か月もかけて掘り出した逸品なのだ、と商品を売り込みます。
しゃもじ掘るのに3年もかかるとか絶対ウソですが、大きくものをいうのは常套手段、それを許容する群衆の姿まで想像すると、まことにほほえましい民謡なのです。
この曲は、おそらく間宮芳生先生の『日本民謡集』全24曲の中で最もよく歌われるものの一つです。なんといってもノリがいいし、絶対音高のないシュプレヒゲザングで、ひときわ華もあります。
かくいう僕も、若かりし頃この曲の録音を聴いて一耳惚れしていまい、民謡の世界に興味を持ち、間宮芳生という作曲家への敬意を深めたのでした。
その録音がこちら。
異能のテノール、森一夫さんの名唱が聴けます。生でも何度か聞いていますが、CDでは東北訛りはやや大人しめ。近年の演奏はさらに磨きがかかっています。
これ聞いて森ちゃん(みな森一夫さんのことをこう呼ぶのです)に憧れ、30歳のころについに弟子入りすることになります。
(余談ですが、いつか「森一夫伝」をまとめたいと思っています。83歳でまだまだお元気ですが、もっといろいろ学んでおきたい!)
杓子売唄はよく歌われる、と言いましたが、ウェブ検索しても録音や演奏動画などがあんまり出てきません。
たぶんこの曲がライブ向きであることと、正解の演奏(?)の形がよく認知されていないからかもしれません。
それなら自分の演奏上げてしまえ!と思って動画の準備をしてたんですが、なんとこの2か月くらいの間に2つの興味深い動画がYouTubeが上がっていました。
ますはこちら。
日本歌曲の大御所、関定子先生の演奏です。初演者の内田るり子さんを彷彿とさせる、コミカルで甲高い歌声が特徴的です。ピアノのミスタッチが異様に多いのはご愛敬(笑)
そしてもう一つはなんとリモート演奏!
バンド編成に三味線を加えた高速リアレンジで、これはなかなか見ていて楽しいです!
既存の音楽ジャンルのスタイルをそのまま使って民謡をアレンジするのは好きではないのですが、この演奏は間宮氏の解釈を根底にして、売り文句の面白さ、軽快さを前面に出していて好感が持てます。って偉そうですね。
とにかくこの曲が大好きなもんで、ぜひいろんな人に演奏してほしいと思ってます。
僕も早く自分の持ち歌と呼べるようにしたいですなぁ。
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