常民の唄ワークショップとレクチャー

天皇誕生日の2月23日、快晴に恵まれたこの日、藤沢にお住まいのレッスン生さんの企画で、日本民謡を山で歌ってみるワークショップを行いました。

藤沢駅の南にある片瀬山からは、湘南の海と箱根の山々を望むことができます。

高級住宅街の中に突如凹凸の険しいハイキングコースが現れ、それほど整備されていない雑木林が広がっていました。海も山も森もあるなんて、このあたりめちゃくちゃ良い。

この日は3名の女性が、和装に身を包んで神奈川県民謡「箱根馬子唄」を歌いました。

ビッキンダーズ流に、楽譜を使わず口伝で旋律を覚えていってもらいます。民謡歌謡(※)となった箱根馬子唄ではなく、『日本民謡大観』の記録に収められている昭和17年の録音をもとに、古い形のものを模倣してみました。

土と落ち葉を踏みしめ、斜面で踏ん張り、周りに木の幹以外反響するものがない場所で、少しづつ「山の身体」に変化していくレッスン生さんたち。それに従って声も徐々に変化していきます。

興味深いのは、樹が生い茂る斜面の下の方を向いて歌うのと、山の上を見ながら太陽に向かって歌うのとでは、勝手に声の色や伸びが変わるんですね。

環境と身体が声を規定する。

民謡の声、常民の声への一つのアプローチ。参加した皆さんにはとても喜んでいただけました。

3月も同じ場所で行う予定、またビッキンダーズ3人と歌う企画も構想中です。ご興味ある方はぜひ!

※民謡歌謡
現在よく歌われ聞かれる日本の民謡は、「正調」と呼ばれる一定の形式をもち、三味線・尺八などを伴奏にマイクを用いて歌われることが多いですが、これらは本来の「民謡」とは異なるものととらえて「民謡歌謡」という名称を与えて区別しています。


同じ日の夜、合唱団CANTUS ANIMAE(カントゥス・アニメ)さんにお招きいただき、民謡に関するレクチャーをする機会をいただきました。

同団が取り組んでいる信長貴富作曲『東北地方の三つの盆唄』について、民謡の歌い方と東北方言の発音をメインとした講義をいたしました。

CANTUS ANIMAEさんと対面するのは初めて。ちょっと、というかかなり緊張して臨んでいたのですが、リアクション豊かで呑み込みの早い皆さんのお蔭で、終始楽しくレクチャーすることができました。

この日のために北東北方言の発音について改めて勉強し直したんですが、僕自身ネイティブであるがゆえに気が付かなった法則もあり、訛りの響きの豊かさと合理性に自分で感心しきりでした。

非ネイティブ話者が習得するのは非常に大変ですが、もはや別の言語ととらえてもらった方が取り組みやすいと思います(笑)。

東北訛りをシステマチックに学びたい方は是非お声かけください。さらに磨いておきます。

この日は座学メインでしたが、今度は是非コブシや発声法の実践についてもお伝えしたいことがたくさん!またお会いしたいです(猛アピール)

民謡

Posted by Taku Sato