最後の仕事唄フィールドワーカー・阪田美枝さん
以前の記事「日本の民謡を聴くには」で、日本の民謡の「声」を参照する資料として阪田美枝(よしえ)さんの『日本の紙漉き唄』と『定本日本の酒造り唄』を紹介しました。
この記事を書いたときには知らなかったのですが、著者の阪田さん、2019年に同志社大学大学院総合政策科学研究科博士課程に入学され、ご自身が収集してきた紙漉き唄と酒造り唄のデジタルアーカイブ化を進めておられたそうです。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/6098
お孫さんも同じ年に同志社に入学されたそうで、それもすごい話なんですが、入学の前にがんが発見され、余命数年を宣告されたとのこと。
お会いしたことはないのですが、上記2冊の著作から常民の歌声への愛情と、執念ともいうべき徹底した態度を感じておりました。命を燃やし続けて、最後の最後まで自分に与えられた「しごと」を全うしようとする生き方、本当に尊敬します。
この春無事大学院を修了され、世界に向けてアーカイブの発信を目指すそう。ジャズピアニストの山下洋輔さんにも影響を与え、これらの仕事唄からうまれた作品をライフワークとする、とまで言わしめたそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/04771927a31fcd5f4ac17e69ad1efcc827e2f399
一度でいいからお会いして、いろいろと仕事唄のことを教えていただきたいです。
阪田先生が民謡収集をしていた1970~90年代ごろは、ぎりぎり仕事唄を実地で知っていた人たちが生き残っていた時代で、フィールドワークで採集をするにはほんとに最後の時期だったと思います。
紙漉き唄と酒造り唄だけに絞りつつも、組織の力に頼らず、たった一人で全国津々浦々を巡って網羅的に唄を収集したその偉業は、最後の仕事唄フィールドワーカーといってしまっても過言ありません。
それにしても阪田先生といい民謡合唱団「篝」といい、京都というのは民謡の研究と実践の両面において、ブレのない一本筋の通ったお方が揃っていますね。
【2022年4月26日追記】
阪田美枝先生は2021(令和3)年11月1日にお亡くなりになったそうです。
同年3月に大学院を修了され、資料のアーカイブも終えて新たなプロジェクトに取り掛かるところだったそうです。
本記事をご覧になった方からお知らせをいただき、訃報を知りました。
偉大なる先人、最後の民謡フィールドワーカー阪田先生、ぜひ一度お目にかかりお話を伺いたかったです。
どうぞ安らかにお眠りください。
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