ビッキンダーズ、芸者と遊ぶ

さる1月28日(金)、群馬県の温泉地・伊香保で開かれていたレジデント型アートイベント「渋川アートリラ2022」に、常民一座ビッキンダーズがアーティストの一員として招聘され、公演を行ってまいりました。

伊香保温泉のある渋川市でミュージカル指導に当たっている座員の日下麻彩が引き寄せたご縁によるものでした。ありがたや!

伊香保温泉は十数年前に十割蕎麦食べ放題と日帰り入浴のセットを目的に来たことがあったんですが(男3人でもりそばを50枚近くいただきました)、宿泊するのは初めて。下調べと稽古の日程もあり、つごう4日間も伊香保の街に滞在いたしました。


今回宿泊と公演でお世話になったお宿は、伊香保名物石段街の中腹にある「千明仁泉亭(ちぎらじんせんてい)」。

1502年創業ということですから、戦国時代から続く由緒正しい老舗旅館ですね。深さ1.2メートルもある立ち湯がユニークで、お庭からは子持山と赤城山、そして眼下に渋川の町並みを見渡すことができます。

招聘アーティストということで素泊まりをお代なしで泊まらせていただいたんですが、こんなところに泊まれる機会、そうそうないですよ・・・!

お宿の前からの眺め

今回の公演では、なんと伊香保の芸者さんとコラボ!というのが最大の目玉。

芸妓衆「つたの家」所属のおふたりとご一緒することになったんですが、そもそも常民(山野海で普通の生活をする人々)を標榜する我々と、酒席を華やかに盛り上げる芸者文化の交流点、というのがどこにあるのかというコンセプトを考えるところからスタートしました。

公演の10日前に伊香保に滞在し、芸者さんと一緒に歌う伊香保の新民謡「新伊香保小唄」と「伊香保おどり」の稽古に先駆け、この曲に歌われている景色(石段街、榛名山、榛名湖など)を見て周り、よそ者である我々がある程度一人称的視点をもって歌えるように望みました。

これって民謡を歌ううえ(あるいはどんな曲でも?)では、絶対不可欠な体験ですね。

極寒で凍結した榛名湖

芸者といえば酒席でのお遊び。今回は太鼓をたたきながら芸者さんとじゃんけんをする「おまわりさん」というお遊びを、大勢で参加できるようにアレンジ。

ビッキンダーズ単独では、上州・群馬の仕事唄を集め、今回ほぼすべて歌いおろし。養蚕や製糸業の歌が多いのがこの地域の特徴ですね。

蚕の飼料となる桑を収穫する際に歌われた「桑摘唄」は、典型的な甚句型の詩形(七・七・七・五音)でできている小気味の良い曲で、最後の五音だけをお客さんに考えてもらい、替え歌で歌ってみるというお遊びも初めて試してみました。これはなかなかに盛り上がりましたな!

民謡の詩にはある程度の流行や常套句はありつつ、かなり自由に歌い手や歌われる地域によって変化をしてきているので、即興的に新しい歌詞を生み出していく、というのは常民の歌が現代の生活の中で生きる在り方を模索しているわれわれにとっては大切な試みでした。

セットリストはこちら。

  1. 口上
  2. 芸者さんの舞踊(伊香保新小唄~伊香保おどり)
  3. 田植唄
  4. 管巻唄
  5. 利根堤防工事唄(土羽搗き唄)
  6. 上州馬子唄(朝の出がけ(千葉)、南部杜氏酒屋流し唄(岩手)とともに)
  7. 桑摘唄
  8. 替え歌コーナー
  9. お遊び「おまわりさん」
  10. 伊香保おどり(常民風)
  11. 新伊香保小唄(ビッキンダーズ×つたの家)


群馬県にまんえん防止措置が発令されている中、どうにか有観客での開催ができたとはいえ、正直集客は非常に不安でした。なんといっても今は温泉地的には閑散期なので、街にあまり人がいない。

ところが蓋を開けてみれば、直前にのぼりを振りながら呼び込みを行ったおかげもあってか、用意した席がすべて埋まる盛況ぶり。皆さんノリもよく、かつ歌声への集中度も非常に高くて、本当に1時間があっという間でした。

ご一緒した芸者さんのおふたり(みなみさん、まりやさん)とは、いつかまた再びのコラボをお約束して、ほかにもいろんな場所やお宿でも歌える機会を熱望しつつ、お開きとなりました!