日本ラトヴィア友好100周年を祝って~JLFプレミア・クワイア

昨年秋に立ち上げた「日本ラトヴィア友好100周年記念 新曲リモート初演プロジェクト」、ついに先日2022年5月6日に完成動画を公開することができました!

ラトヴィアがロシア帝国から独立したのが1918年、その後ラトヴィアを独立国家として承認した5つの国の一つが日本で、それが今から101年前の1921年のことでした。

2021年は日本とラトヴィアが友好関係を結んでちょうど100年の節目の年。その機会を祝うとともに、これからの100年の友情を紡ぐ新たな出発点として、このプロジェクトを発足しました。

ラトヴィアで合唱指揮を学びながらすでにプロ合唱団員としても活動する友人の山﨑志野さんと協力し、記念の新曲を新進気鋭の作曲家Evija Skuķeさんに委嘱することができました。


なにはともあれ、完成した動画をご覧ください!

プログラムは以下の3曲です。

“Neba maize pate nāca"
(パンは一人でやってこない)
ラトヴィア民謡
編曲:Selga Mence(セルガ・メンツェ)

“Pūt, vējiņi"
(風よ、そよげ)
ラトヴィア民謡
編曲:Andrejs Jurjāns(アンドレイス・ユルヤーンス)

“Seki no ki"
島根県民謡・ラトガレ地方民謡
作曲:Evija Skuķe(エヴィヤ・スクケ)
★世界初演

“Neba maize pate nāca"はラトヴィアの「歌と踊りの祭典(Vispārējie latviešu Dziesmu un Deju svētki)」で歌われた曲で、ラトヴィアでは愛唱曲して根付いているとのこと。当たり前に食べているパンにも、それを育てる人々と自然の営みがあることを教えてくれます。

“Pūt, vējiņi"は、ラトヴィアの第二の国歌ともいうべき大切な曲。ロシア帝国、ソ連の抑圧下において、ラトヴィア人の民族意識とプライドを支え、独立への機運を高めた曲です。「歌と踊りの祭典」の最後の最後に歌われます。

Evijaさんの新曲"Seki no ki"は、日本とラトヴィアの民謡を組み合わせた曲を書いてほしいというこちらのリクエストに応えて、島根県民謡「関の五本松」をベースに、ラトヴィア東部のラトガレ地方の民謡を組み合わせた作品。

ミニマリスティックな「ショコー」のパターン、溌溂としたリズム、豪放なハーモニー・・・民謡編曲では思いもよらなかった様々な仕掛けが組み込まれた、超カッコイイ作品です!

「関の五本松」は、もともと五本あった名所・美保関の松がお上の横暴で一本切られてしまい、これ以上切られないように「残った4本は二組の夫婦ですから・・・」と情けに訴えたという逸話がもとになった民謡です。一方ラトガレの民謡も「結婚」をテーマにした詩で、日本とラトヴィアを夫婦になぞらえたという裏設定もあります。


昨年のエストニアとのバーチャル合唱と違ったのは、今回は歌うメンバーがすべて日本人だったということ。

私が指揮する合唱団ガイスマと合唱団Baltu、そして公募で全国から集まってくださった約50名の歌い手によるバーチャル合唱となりました。

最初はラトヴィアの合唱団との共演も考えていたのですが、ラトヴィアもまだコロナ禍のさなかで合唱団活動が安定していないこともあり、パートナーとなる団体を見つけにくいという事情もありました。

結果として、ラトヴィアの音楽や文化への興味を持ってくれる人を増やすこと、日本人からラトヴィアへの祝意と友好のメッセージを発信することという2つの大きな目標を設定し、プロジェクト進めることにしました。

オンラインで海外の作曲者と容易にコミュニケーションできたというのもよかったですね!コロナ前なら考えられなかったこと。


Evijaさんの新曲はなかなか大変で、初めに楽譜をもらったときは、これリモート合唱で完成させられるか?と一瞬不安になりましたが、曲をいくつかのセクションに分けて録音を送ってもらうことで歌い手の皆さんの負担を少しでも軽くするように工夫しました。

見た目は難しく見えるんですが、いざ歌い慣れるとクセになる旋律ばかりで、参加者の皆さんも最終的には楽しんで歌ってくれたようです。むしろリアルでハモる方が難しくて(笑)、リモート合唱だからこそこの短い期間で完成させられたかも。

とてもいい曲なので、ぜひ遠くない将来にリアルでの初演も成し遂げたいと思います!

編集はそれはそれは大変でしたが、一人一人の声を聴きながら、その個性と特性を生かすように合唱に組み込んでいく作業は、むしろリアルでの合唱指揮活動の方へと大きな影響をもたらしてくれています。歌い手の皆さんには、お互いの声は聞こえていない状態で歌うという孤独を強いられますが、それが合わさった時の感動は一層強くなるようです。


上記動画をご覧いただければお分かりになりますが、今回は両国の大使にも多大なご協力を賜りました。

駐日ラトビア共和国大使のDace Treija-Masī様、在ラトビア日本国大使の高瀬寧様からビデオでのご挨拶をいただき、本プロジェクトの本旨である「日本とラトヴィアの恒久的な友好関係」をお示しくださいました。

プロジェクトの最中にウクライナ問題が勃発したことも、影響は少なくありませんでした。ラトヴィアはロシアと国境を接し、NATOにも加盟しているため、いわばロシアの脅威を最前線で受け止める地理にあります。

私たちが想像する以上にラトヴィア取り巻く状況は緊迫感があり、両大使ともこの問題のため2月以降は忙殺されていたと伺いました。そんななか、二国の友好の絆を深めようとするメッセージの持つ重みを、おふたりのお言葉の端々に感じ取りました。

改めまして両大使、および両大使館の皆様に感謝申し上げます。


いよいよ来年は「歌と踊りの祭典」が5年ぶりに開催されます。合唱団ガイスマは祭典への参加を目指して練習を始めたところです。

これを機会にラトヴィアの音楽と文化を愛する人が増え、一緒に祭典に参加してくれる方が増えることを期待しています。

「歌と踊りの祭典」に関して、オンラインで何かできないか画策中です。続報をお待ちください!

合唱

Posted by Taku Sato