日本民謡について調べるには(参考文献その1)

私が所属しているSalicus Kammerchorのメルマガ「サリクス通信」で、先月から「にっぽん“民謡”探訪~生きていた普通の人々の歌声」という連載記事を月イチで寄稿しています。NHKの番組みたいなタイトルですね。

研究者でも専門家でもなく、ただのイチ民謡愛好家でしかないものですが、この記事を書くことは、自分にとって民謡とか民俗的な音楽がどうして大事なのか、なにに惹かれているのかを言語化することで、かなり自分の中を深く探って執筆しています。

日本の民謡がないがしろにされている、という危機感はずっとあるのですが、じゃあ現代人にとって魅力的な、あるいは心から欲する音楽としての“民謡”のあり方が果たしてどのようなものなのか、答えのない問いを繰り返しているところです。

我ながらニッチだなあとか、この記事読んでる人楽しいのかなとか、全然まだまだ自信がないのですが、おかげさまでというか、佐藤拓=民謡の人、みたいなイメージが最近急に固まってきたような印象です。民謡についてお問い合わせをいただくことも増えてきました。

日本民謡を題材とした作品を歌う際、その元の民謡について歴史、地理、社会的背景を知り、またそれを歌ってきた常民の「感覚」や「感情」にイマジネーションを向けることは、とても大事だと思っています。曲を書く人も、演奏する人も、同じくらいそこを学んで音楽にしてほしい。

でも、じゃあどうやってそういうことを調べるのか?

そのリファレンスの仕方がわからないと先に進めないですよね。

ということで、だれの役に立つのかわかりませんが(笑)、私が民謡について調べものするときに活用している参考文献を少しずつ紹介していこうと思います。

注:以下の書籍は新刊で買うのはほぼ不可能です。古書を探すか、下で紹介する図書館などで閲覧するしかありません。

①日本民謡大観(日本放送協会出版)

NHKが半世紀近くかけて収集した全国各地の民謡を、五線譜と録音、詳細な解説と充実したコラム(というかほぼ論文)で参照することができる、最強の文献です。

北海道から九州まで全9巻、各巻にCD10枚と録音記録の冊子が付いたものが第1弾で、その後沖縄・奄美・八重山・宮古の南島諸島が各1巻にまとめられて、全13巻となりました。(南島諸島は録音CDなし)

以前は図書館まで赴いて参照していたんですが、10年ほど前エイっと第1弾の9冊、CD90枚分の録音を購入しました。今でも最もお世話になっている書物です。

南島諸島の4冊はまだ持っていないので、いつか買い揃えたいと夢見ています。が、なかなかにエクスペンシブ。

【読める場所】
国立国会図書館、国立歴史民俗博物館、東京文化会館 音楽資料室、各音大図書館 他
早稲田大学図書館(在校生か卒業生しか使えませんが、国内最強クラスの蔵書量を誇ります)
港区図書館など、公立図書館には割と置いてあります。CDを貸し出ししているところも!
録音はiTunesでも全曲購入できます。

②東北民謡集(NHK仙台放送局)

同じくNHKによる民謡収集事業ですが、こちらは仙台放送局が独自に行ったものの記録で、東北6県各1冊ずつ、すべて五線譜に記録されています。

岩手県出身の音楽家・武田忠一郎がほぼ一人で採集した大量の民謡を収めており、数で言えば日本民謡大観をはるかにしのぐものとなっています。

民謡の宝庫・東北の古い民謡や民俗芸能について調べるならば、何をおいても手に取るべきです。同じ編者による『東北のわらべうた』という本も出ています。

【読める場所】
国立国会図書館、国立歴史民俗博物館、東京文化会館 音楽資料室 他
大学図書館で所蔵しているところも多いようです。公立図書館ではやや少なめ(大田区図書館など)

③日本民謡全集(雄山閣出版)

①と②は、有名無名問わずあらゆる種類の民謡を採集したものですが、この『日本民謡全集』はたとえばソーラン節とか安来節とか会津磐梯山とか、かなりメジャーな民謡を中心に楽譜と解説をまとめたものです。全5巻。

総曲数では劣るものの、それでもかなりの数、全国各地の民謡を網羅しており、文字も大きく見やすいので、有名民謡を調べるにはこちらのほうが向いているかも。

【読める場所】
国立国会図書館、国立歴史民俗博物館、東京文化会館 音楽資料室 他
公立図書館はかなり所蔵率高し。東京都内なら30以上の市区図書館で借りられます。
大学図書館で所蔵しているところもあります。

④日本庶民生活史料集成 第24巻 民謡・童謡(三一書房)

これは楽譜ではなく、明治後期から昭和の半ばごろまでに各地で発行された、地方民謡の歌詞を採集した記録です。

歌詞しかないうえに地域もかなりピンポイント、学術資料としては貴重ですが、正直なところ民謡を調べるためのリファレンス性は高くありません。より深みにハマりたい方は(笑)ぜひ手に取ってみてください。

参考までに目次を。以下のほかに「田川地方民謡修成」と「西薩摩の民謡」が収録されています。

【読める場所】
国立国会図書館、国立歴史民俗博物館 他
300校以上の大学図書館に所蔵されています。
公立図書館でもおいてあるところが結構あり。

⑤民謡緊急調査報告書

1979~1989年に文化庁の事業として行われた、全国各地の民謡の残存状況に関する緊急調査の報告で、基本的には歌詞のみが記載されています。

お役所の報告書ですからそう面白いものではありませんが、大規模な民謡の記録、という意味では現在でもこれが最新のものです。平成に入ってからは、民謡が残っている場所は(一部の民俗芸能保存会などを除いて)ほとんどなくなってしまいました。

この調査のすごいところは全都道府県で調査を行ったところで、つまり報告書は47冊もあるということ。また同時に録音も採集されたようで、千葉県にある国立歴史民俗博物館ではその膨大なデータベースを参照することができます。

https://www.rekihaku.ac.jp/doc/gaiyou/miny.html

音楽家向けのリファレンス性はやはり高くありませんが、歌詞のバリエーションを見たい、民謡の歌詞の変遷を知りたい、という向きには適しているかもしれません。「〇〇県の民謡」で検索するとだいたいその地域の図書館には所蔵されています。


とりあえずその1はここまで。上記5点だけでも相当いろいろなことが調べられると思いますよ。

ちなみに私は⑤以外すべて所有しています。なにか知りたいことがありましたお気軽にお問合せください!

民謡

Posted by Taku Sato